ブロックチェーン技術を採用する組織が増え続けています。グランド・ビュー・リサーチによると、2022年の世界のブロックチェーン技術市場価値は100億2000万と推定されました。アナリストらは、2023年から2030年までの年平均成長率を87.7％と予測しています。ビジネスにおけるブロックチェーンのトップは暗号通貨ですが、その他のユースケースも人気が高まっています。これらの技術をより頻繁に採用しているセクターには、金融サービス、政府、ヘルスケアなどがあり、関心と知識が持続すればするほど、市場機会は拡大し続けるでしょう。

では、ブロックチェーンの何がそんなに魅力的なのでしょうか？本来の運用上の特徴を見れば、この疑問に答えることができるでしょう。ブロックチェーンは、コンピュータの分散型ネットワーク上で安全かつ永続的に取引を記録することができます。サードパーティのファシリテーターは必要なく、取引履歴は不変です。金融機関がグローバルな取引を促進するためにブロックチェーン決済システムを採用することを考えてみましょう。これによって、国境を越えた取引が簡単にできるようになります。その他のトレンドのユースケースには、スマートコントラクト、サービスに対する暗号通貨決済、暗号通貨を担保とした融資、セキュリティ強化などがあります。

すべての新興テクノロジーと同様に、訴訟や規制当局の調査に対処する際には、特別な考慮事項があります。ブロックチェーンは、導入の増加に伴い、発見可能なESIとして頻繁に取り上げられるようになりました。SECやCFTCのような機関は、暗号取引所やブロックチェーン技術を利用する組織が適切に行動していることを確認するため、調査を開始する頻度を増やしています。その一例が、ある組織のイニシャル・コイン・オファリングに関する調査です。

課題を予測する

今日、新しいデータソースはすべて、ある程度のレベルの収集とレビューの課題を提起しています。ブロックチェーンも例外ではなく、特にその背後にある技術は独特で複雑です。組織の法務部門は常に情報を入手し、企業全体と協力してブロックチェーン特有のポリシーを策定することが極めて重要です。フォレンジック、情報ガバナンス、eDiscovery、プライバシー、コンプライアンスへの影響があり、特に、これらの分野に関わる固有の問題に対する深い専門知識がない場合、これを両立させるのは大変なことです。適切なパートナーシップを見つけることで、世界は大きく変わります。その理由は以下の通りです。

ブロックチェーンの専門家を擁するプロバイダーは、訴訟や調査への影響について助言することができ、組織は戦略的優位性を獲得し、重要な洞察で武装することができます。例えば、ブロックチェーン技術の導入や遭遇時に注意すべき点についてアドバイスを受け、情報ガバナンス計画でこれを積極的に考慮することは、ゲームチェンジャーとなり得ます。このアプローチは、データの所在を把握し、このテクノロジーに機密データタイプを保存することに関するポリシーを持つことで、将来のeDiscovery問題を抑制するのに役立ちます。一般的に、暗号化されたブロックチェーンは機密データの保存に使用できると考えられていますが、組織は慎重に検討する必要があるでしょう。医療情報など特定のデータをパブリック・ブロックチェーンに保管することが適切かどうかについては、議論が続いています。

ブロックチェーン内の取引を追跡することは困難なため、電子証拠開示にはフォレンジック機能が不可欠です。組織のブロックチェーンへの関与レベルに応じて、マネージド サービスの提供が理想的となる場合があります。潜在的なプロバイダーパートナーには、フォレンジック収集と分析のスキルだけでなく、トランザクションライフサイクルの追跡とデータ保存のアプローチについても必ず質問してください。これらすべては、ブロックチェーン関連の訴訟や調査に対する強力な戦略に貢献します。
最後に、法務部門は、ブロックチェーンがESIソースとして使用される可能性があることを覚えておく必要があります。それは、たとえ組織がこのテクノロジーを活用していない場合でも同様です。相手側は ‐もしくは関与していない組織であっても‐ ブロックチェーン ネットワーク上に関連情報を保持している可能性があります。
例えば昨年の詐欺事件である Jacobo v. Doe 事件では、裁判官は、未知の被告の特定に役立てるために、当事者が暗号通貨取引所に証拠開示請求を行うことを認めました。これは、識別問題が発生した場合に訴訟当事者に新たな道筋を提供するため、有益でもあります。暗号通貨の取引は永続的であり、変更することができないからです。
最終的な感想
まとめますと、新しいテクノロジーを採用する際には、常に法的な影響に積極的に対処すべきです。これを怠ると、適切なリソースがあれば回避できたはずのネガティブな結果を招きかねません。
FTXをはじめとする暗号取引所の崩壊により、デジタル通貨とブロックチェーンをめぐる規制の監視はさらに厳しくなるでしょう。そのため、十分な情報に基づいてこの技術を利用することが絶対条件となりまう。組織とその法務部門は、適切な場合にこれらのテクノロジーを受け入れるための体制を整え、ハードルを乗り越えるためのパートナーシップを構築する必要があるのです。
本記事の内容は、一般的な情報をお伝えすることのみを目的としており、法的なアドバイスや意見を提供するものではありません。